防音性能を上げる知恵




完全防音は難しくても少しでも性能を上げたい

部屋を防音したい理由はいろいろあります。

防音の欲求には、交通量の多い道路に面した車の音や、電車など外部の音を少しでも遮断したい場合と、楽器を練習したいなど内部の音を漏らしたくない場合が考えられます。
防音とは、遮音、吸音、防振、制振の総称ですが今回は遮音について考えていきます。

前にも 落ち着いた部屋と音の関連性 で吸音について書いていますが、今回も完全防音ではなく防音性能を上げると言う意味で書いていきます。
ドラムや管楽器など大きい音を防ごうと思うと、既製品の防音室や防音専門の業者に依頼することになりますが、予算もかなり高額になります。

リフォームで出来る防音性能

1. 遮音性能を上げる
2. 遮音性能と耐震性能は相反する
3. 天井が楽器化するのを防ぐ
4. 近隣の音トラブル解決策

防音性能を上げる

遮音とは字の通りで音を遮ることですが、音は空気振動で伝わります。

壁や床、天井に空気振動を抑える材料を使って遮音性能を上げる工事をしますが、遮音材として効果が期待できるのは一般的に重いものになります。

軽い材料より重い材料の方が空気振動を弱めます。
アパートなどでも木造や鉄骨造よりも鉄筋コンクリート造の方がはるかに遮音効果が高くなります。
なぜなら壁や床、天井も重いコンクリートで作られた構造だからです。
木造の家の遮音効果を少しでも上げる場合は、壁や床、天井に少しでも重い建材などを使うことです。

遮音シートなども既製品で販売されていますが、例えば断熱材も発泡プラスチック系のスタイロフォームよりウール系のグラスウール、更にはもっと重いロックウールが高い能力を発揮します。
壁や天井にクロスの下地として張る石こうボードも9.5㎜の厚さの物より12.5㎜の物を使うとか、更にはそれを二重張りにすると効果が上がります。
石こうボードは重いので天井に二重張りする場合は、吊り木などの強度を十分上げておかないと、天井が落ちてくると言った危険が伴うので特に注意する必要があります。

窓はペアガラスのサッシにペアガラスの内窓を追加したり、ガラス自体も厚い物が効果的です。

遮音性能と耐震性能は相反する

特に木造住宅の場合注意したいのは、遮音性能は耐震性の向上とは反すると言うことを認識しておく必要があります。

耐震性を上げる場合は壁や屋根を軽くすると言うのが通常の考え方なので、遮音性能を上げるのは寝室だけとか趣味の部屋だけにするなど部分的に考える方が予算的に考えても合理的です。
寝室などで外部の音を少しでも遮断したい場合は、内窓を設置するだけでもかなりの効果が少ない予算で期待できるのでお勧めです。
土壁の家でその土壁の撤去の必要性についても他の記事で書いていますが、土壁は重く遮音性能は高いと言えますが、耐震性を考えるなら撤去して筋交い補強などを考えることが理に適っています。

天井が楽器化するのを防ぐ

木造で二階の音が一階に伝わるのも個体伝搬音と言う意味では壁と同じですが、床板や天井板がギターやピアノにある反響版と同じ役割を果たしてしまい、音を増幅している可能性も否定できないので、この場合は板自体の振動を抑えるための工事が必要になります。

特に天井の吊り木がバイオリンの駒や魂柱の役割を果たしているので、吊り木自体を二階の床構造材から独立させてやることで効果が高まります。
木造住宅の場合、1階の天井を吊るすのに2階床を支える梁から直接木材を使って吊っている構造を目にします。
これでは2階の床がマイクで1階の天井がスピーカーに変身していても不思議ではありません。
2階の音がうるさく気になるなら、やはり1階の天井の吊り木は2階の床の梁と独立させておくことで防げそうです。

近隣の音トラブル解決策

家が密集していたり、アパートの上下階での一番の防音対策はコミュニケーションです。

近隣の音トラブルはコミュニケーション不足の場合が大半なので、普段からお互いの理解を深め、迷惑を掛けそうなときは前もって伝えるだけで防音に匹敵する効果を得られます。
一般家屋で完全に音を遮断することは現実的ではありませんが、最低限隣近所に迷惑が掛からないように心掛けるマナーは必要です。
特に両隣と表裏の人とは普段からコミュニケーションを取り、それぞれのライフスタイルを知っておくと役に立ちます。
大概の生活音は「お互いさま」と言えますが、それでもリフォーム工事やDIY、楽器の練習などはご迷惑をお掛けする旨を伝えた上で配慮が必要です。
多少の迷惑もコミュニケーションがあるのと、まったくないのとでは遥かにトラブル要素に差が出ます。