樋(とい)工事




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家の寿命を短くする樋の劣化

屋根の軒先に付いていて雨を受ける重要な役目を果たすものが樋です。
家を建てたりリフォームをするとき、強い執着もなく、ほとんど拘らないのも樋ではないでしょうか。
私が建築の仕事をしていた時、お客様の拘りや要望がほとんど無かったのも樋でした。
しかし家の雨対策を担う樋は非常に重要な意味を持ちます。
地域によっても異なりますが、意匠的に樋が家の豪華差をアピールしたり華やかな屋根にするような意味を持っているところもありました。
ここ近年の異常気象や屋根の役割変化によって、今後は樋に求める考えも変えていくことが求められています。

樋の主な材質

・塩化ビニール(耐久性はあるが強度が低い)
・ガルバリウム鋼板(強度が高く安価)
・銅(酸性雨によって瓦屋根との相性が悪くなった)
・ステンレス(酸性雨には強いが高額)
樋は材質だけでなく屋根との相性や気候によっても強度や耐久性が変わってきます。
前にも「屋根のリフォーム」で書いていますが近年の雨の酸性化で瓦屋根と銅製の樋の相性が非常に悪くなっています。

積雪地の樋

積雪地では強度の高い樋製品が求められ設計基準もありますが、積雪のない一般地域とは施工方法にも違いがあります。

雪が降らない地域では雨だけを受ければよいのですが、積雪地では雪の荷重を軽減するため軒先から樋が出るのを最低限に抑える必要があります。
軒樋だけでなくそれに付随する集水桝も、雪の荷重を受けない製品を選ぶべきです。
近年の異常気象で今まで雪が降らなかった地域でも積雪の可能性が高まっているため、今後は積雪地と同じ施工を求められる地域が増えてくるでしょう。

太陽光発電システムと樋

最近多く見受けられるのが太陽光パネルが上がっている屋根の樋雪害です。

屋根勾配によっても異なるでしょうが、太陽光パネルは南を中心に設置してあることが多く雪は早く落ちます。
しかし雪質によっては太陽光パネルの上に長く留まり、重くなってから滑り落ちることがあります。
新築時ではなく後で設置された太陽光発電システムの販売業者は樋の事まで考えずに施工するため雪害を受けやすいと言えます。
太陽光パネルの下に大き目の集水器があれば樋が雪害で破損することになります。

樋の意匠的変化

和風の家屋で軒先を豪華に見せるための樋では銅製品が多く使われてきましたが、今後はステンレスのいぶしなどに交換することが望ましいと思われます。

昔は屋根の飾り的な役割も果たしていたので存在感も大きかった樋も、最近は存在感を無くす代わりに家や屋根をスッキリと見せる輪郭的役割を果たすように変化してきました。

樋のプランをする場合に強度や耐久性に加えデザインにも考慮しなければならない時代になっていますが、樋を製造するメーカーとリフォームの現場に認識の相違点があるように思えてならなりません。

まとめ

お客様の要望や拘りの少ない樋工事は設計や施工がないがしろにされる傾向が強く、特にリフォームに於いて板金屋さん任せにしている施工担当者が多いと感じます。

樋も家のデザインに大きく影響を与えるので、竪樋の落とし場所や軒樋の受け金具の色まで拘りを忘れずに決めてほしいと願っています。