土壁リフォーム




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土壁撤去の優先順位

土壁リフォームの悩みを、前に書いた「土壁の家リフォーム」を元にもう少し掘り下げて考えてみました。土壁の家をリフォームする場合一番悩むことが土壁撤去の必要性だと思います。
前の記事「土壁の家リフォーム」のまとめで「先ずは何を優先するかを考えて答えを出して見てはいかがでしょう。」と書いていますが、もう少し詳しく説明します。

土壁撤去をするか、しないかの優先順位

1. 耐震を優先

2. 遮音を優先

3. 断熱を優先

4. 予算を優先

5. 調湿を優先

1. 耐震を優先

耐震を優先するなら土壁や重い棟瓦は撤去して、筋交いなどの補強を充実させます。
耐震を優先する場合の土壁撤去の優先順位は「上から下に」が基本です。

土壁より先ず屋根を軽くすることを考えてみましょう。

昔の瓦施工は瓦の下に土を乗せていることがあるので、その場合は最も重い屋根になっています。

その後、屋根に土は乗せなくなったものの「屋根はその家の財力の象徴」と言わんばかりに棟(屋根の一番高い部位)に何枚も高く瓦を積んでいました。

今の瓦屋根はメンテナンスフリーと言ってもいいほど長持ちして、10数年先の塗装メンテなどの必要性もありません。

このような理由から私個人のお勧めとして、高く積んだ棟瓦を撤去して一重だけにすれば屋根を軽くすることができます。

「屋根のリフォーム」を参考にして下さい。
屋根を軽くした後は二階の土壁を撤去します。

二階の土壁も相当量の重量があり耐震を優先するなら撤去が望ましいと考えます。

外壁に面した壁よりも内部の間仕切壁の壁土撤去が優先順位は上です。
土壁を撤去した後、筋交いや金物で耐震補強をしなければなりませんが、予算的には特別な事をしない限りそんなに高いものではありません。

但し、一階で筋交い補強が必要になる箇所に立ち上がり基礎など土台を固定する物がなければ新たに基礎を作るための費用が掛かります。

2. 遮音を優先

遮音を優先するなら土壁の隙間を補修してそのまま利用します。
例えばコンクリートのような重い壁材料ほど遮音効果は高いので、特に外壁に面する壁は撤去せずに利用する方が家の遮音性能は落ちません。
内部間仕切り壁の土壁だけ撤去すればいいので予算的にも助かります。

但し、実際には窓の遮音性能も上げないと、土壁の遮音効果は実感できないと思います。

窓の遮音効果を上げるには、すべてペアガラスにした上にペアガラスの内窓も設置すれば効果が高まります。

もし窓自体を取り替える場合で遮音性を優先するなら出来る限り小さい窓にする方が効果的です。

必要ない窓なら撤去して壁にしてしまうことも名案かも知れません。
小さくしたりして新たにできた壁は重い材料で埋めることが遮音性能を高めるコツですが、土壁は高価です。

ロックウールの残熱材に12.5㎜のプラスターボードを二重貼りする方が安価で遮音効果も期待できます。

この時軽いスタイロフォームなどの発泡系断熱材は遮音効果が低くなります。

3. 断熱を優先

断熱を優先するなら土壁を置いたまま断熱材を併用して窓も断熱サッシに変えます。
土壁自体は熱伝導率も高く断熱効果は低いのですが、部屋が寒いと感じる原因は土壁以外にあります。

特には窓と隙間風だと考えられ、断熱を優先した土壁の家リフォームではそれらの改善を優先することが求められます。

窓に関してはペアガラスや内窓など遮音優先と同じ対策になり、隙間風は特に今のリフォームでは当たり前になった気流止め対策が必要です。

新築の場合は言わなくても気流止めをするのが必須になっていますが、リフォームではまだまだその意識が低い業者も多く、注意が必要です。

気流止めは既存の根太や床板を残したままリフォームする場合は特にないがしろにされている項目です。

窓と隙間風対策をした後、予算に応じて壁土を撤去するか否かを検討してみてはいかがでしょう。

外壁に面した土壁を残したまま断熱材を併用することも可能です。

4. 予算を優先

予算を優先するなら土壁撤去は多くの手間や処分費が必要になるので、そのまま利用します。
現在は解体費とか処分費は高額だと認識しておくことが重要です。
下手をすれば壁を作るより土壁を撤去する方が高いかも知れません。

壁土は元々、山によくある粘っこい赤土につなぎと言われるわらくずなどで出来ています。

将来土にかえるものなのですが、産業廃棄物として捉えられているため処分費は安くないのです。

壁土のメリットが理解できて予算を優先するなら、解体撤去せずにそのまま利用する方が得策だと思います。

※参考記事

5. 調湿を優先

調湿作用を優先するなら大壁にはせずに珪藻土などで仕上げます。
調湿作用を優先するからと言って壁土は残し、その上に下地をしてボードとビニールクロスで仕上げるのはお勧めできません。

土壁の持つ調湿性能を、ビニールクロスで閉じ込めてしまっていることになるからです。

部屋の調湿効果を高めたいなら、土壁の上に九州のシラス壁や珪藻土などの自然素材で仕上げるのが効果的です。

たまに「せっかく珪藻土で仕上げた壁にカビが発生して断念だ」などと聞くことがあります。

これは調湿性能と断熱性能の誤解からくる勘違い施工にあるとも言えます。
壁の結露やカビは、壁の表面温度が下がると発生しやすくなります。
例えば壁の中は空洞でボード地に薄く珪藻土で仕上げても、冷たい空気が壁の中に入れば結露は避けられません。

リフォームで気流止めをしなければ床下の冷気が壁内に侵入して壁の表面温度を下げるのが原因です。

地域環境や生活環境にもよりますが、壁土の上に珪藻土などで仕上げても壁土自体断熱性能が弱いので結露のリスクが低いとは言えません。

やはり壁の表面温度が下がらない工夫として、外壁に面した土壁の内部側を珪藻土などで仕上げるなら、外側は断熱材で熱伝導率を下げる事が必要と思われます。


土壁撤去の必要性について考えてみましたが、環境や状況、欲求によってこれらの判断も違ってきます。
私見で書きましたが参考にして頂き、最終判断は信頼できるプロと現場を見ながら相談されることをお勧めします。