家づくりが要望通りになっていますか?




設計士の作品づくりはお断り!

建売住宅やマンションを買うのとは違ってリフォームは注文住宅に近いと言えます。
住む人の要望を取り入れて建てられるのが注文住宅ですが、中には住む人の要望より建てる会社や設計事務所の思いがいっぱい詰まった家になっている事もあります。
リフォームの場合も同じで、お願いした会社にあまり多くをお任せしてしまうと、予算ばかりが高くなって注文者の思いより施工者の思いが優先されてしまうことがあるので注意が必要です。

なぜそのような事になるのかと言うと、注文者は素人で施工者はプロだからと、双方ともが納得してしまっているからです。
注文者側は高額なお金を払って理想の家を手に入れようとしているのに、途中から違和感を感じだすことがあります。

私が相談を受けた新築の例

近くにスキー場がある緑に囲まれた田舎に住んでいる方が新築するのに、そこから120キロほど離れた都市部のちょっとおしゃれなデザインを得意とする設計事務所に依頼をされたのです。

設計が出来上がり最終打ち合わせの時に、ハッと気づいたことがあったそうです。
脱衣場に窓がないのです。
家が密集している都市部とは違い、家の周りは田畑しかないので脱衣場に窓がない理由が理解できなかったのです。
しかも図面を見る限り脱衣場は外壁に面していたので、何か耐震など他の理由があるのかも知れないと思ったそうです。
それでも田舎なので天気のいい日は浴室や脱衣場に風を通したり自然光も入れたいと考えるのは当然と思えます。
その疑問を設計士に質問したとき、返ってきた答えに呆気にとられたと言われます。
「その窓一つでこの家のデザインが崩れてしまい、私が設計した意味がなくなります」と言われたそうです。
家の前の国道を冬には多くのスキー客が車で通り、その設計事務所がある都市部からも多くの人がスキーで通る道でした。
私に相談された内容は、「そこだけが納得できないけど、こちらからお願いした設計士さんなので強く言えなくて困っている」とのことでした。
私に言わせれば「その設計士さんは自分の作品をあなたのお金で作っているのだろう」としか思えなかったので、「自分の要望(欲求)を通さないとこの先ずっと後悔することになりますよ」と答えました。

私が相談を受けたリフォームの例

その方は、床面積が80坪を超す大きな家の全改修する工事を、隣町の大きな建築会社に依頼して契約前の段階で相談に来られました。

その会社に依頼するきっかけになったのは、その会社が請け負った家の完成見学会にいったことでしたが、契約前になってこれでいいのか不安がよぎったのだそうです。
図面を見せて頂いた時にすぐに感じた事は、すごく思い切った間取りでした。
二階の南に面した大きな部屋は階段を上がって来たフロアで屋内物干し室を兼ねた明るいロビーと言ったところです。
しかしその部屋を優先させた結果、キッチンから直接入るトイレや、二世帯用の並んだ玄関など腑に落ちない点がいくつか見つかったので、納得できるのか聞いてみました。
「トイレの水を流す音がキッチンに聞こえると思われるのですが納得されていますか」「二世帯の玄関が並んでいますが、奥様とご両親(嫁と姑)が顔を合わす機会が多くなるのは大丈夫ですか」などです。
「そこまで説明を受けていないので考えてもみなかった」とのことでした。
それよりも「この改修工事も完成見学会をしたいので、精一杯の仕事をしますからご協力をお願いします」と頼まれたそうなのです。
最初に感じた思い切った間取りはこの完成見学会用だったのではと思いたくなるのは私だけでしょうか。
因みにこの設計をされたのは若い独身の方らしく、同居の嫁姑問題など経験がないのでこの間取りになるのもうなづけてしまいました。

建築の上では注文者が素人で施工者はプロと言えますが、実際生活するのもお金を出すのも注文者である限り、請負者はその方の要望を叶えるのは当然で、私がよく言っている「言語化しにくい欲求」までも感じ取ってほしいと思うのです。