リフォームの諸経費から見えるもの




見積書の諸経費に隠された会社の理念

リフォームの見積書には通常、図面や内訳書、約款などが添付してあります。
そのなかの内訳書の上の方に記載されている諸経費という項目は実際何の金額なのか、それは妥当な金額なのかを見抜くことは困難です。
多くの場合は会社で決められた一定率を上乗せされただけの金額なのですが、諸経費にこそ、その会社の営業姿勢や理念とも言える主義主張が隠れているので、じっくり見るといろんなことが読めてくるものです。

 目次

1. 諸経費は会社によって違う

2. 諸経費の意味とは

3. 諸経費率

4. 会社によって違う諸経費の扱い方

1. 諸経費は会社によって違う

リフォーム内訳の一つで一式金額でよく最初に書かれていますが、リフォーム会社によって決め方も違い最も曖昧な金額になっています。
曖昧と言ったのは諸経費に根拠のある内訳が存在しないのが通例で、一般的には工事費や材料費にそれぞれの会社で決めた割合を上乗せしているに過ぎません。

よく聞く割合は10%~20%程度ですが、時には30%以上と言った経費率の話しを聞いたこともあります。
今では当たり前のように書いてある諸経費なので、これに関していちいち聞かれるお客さんも少なく、リフォーム会社の若い営業マンには突然聞かれて返事ができないと言った事例もあるくらいです。

公共工事などでも正式に認められている諸経費ですが、一般のリフォームで決められた割合規制はありません。

2. 諸経費の意味とは

実際諸経費とは、その工事に掛かる諸々の経費なので、例えば現場監督が現場まで行く車の燃料費であったり車の維持費、職人に指示するための図面作成にかかる手間であったり、段取りのための電話代や現場の点検など多岐に渡ります。
ここで言えることはリフォームの諸経費とは元々直接工事費に掛かるのが普通だと言うことです。
このように現場監督の給料などは現場から捻出することになりますが、一人の現場監督が1現場だけとは限らず3現場持っていたり、10日で終わった現場など計算するのも複雑なので一律の割合を掛けているのです。
しかしリフォーム会社によってはこの直接工事だけでなく、キッチンやユニットバスの商品にも諸経費を乗せている会社があります。
これは最近リフォーム業で負担が増えている打ち合わせなどに掛かる経費が存在するからです。
中にはリフォーム業者のアシスタント業務と言えども打ち合わせから複雑な商品の発注業務など以前に比べ責任のある仕事量はかなり増えているので、その人たちの給料も現場経費からと言うことになります。
そのためリフォーム工事では全体の内訳金額に諸経費を一定率上乗せすることを決めている会社が多いのです。

3. 諸経費率

このように工事に掛かる諸々の経費は会社で一定率を定めておけば簡単に計算することができると言った理由で決まられていますが、お客様にしてみればその経費率に矛盾を感じる場合も出てきます。
リフォーム会社では積算業務段階でエクセルや見積もりソフトによって自動で経費が算出されている場合がほとんどですが、それだけでは「その経費率おかしくないですか?」と言った諸経費金額が出来てきても不思議ではありません。
例えば、経費率18%のリフォーム会社でキッチン取り換えの見積もりを依頼したら、キッチン本体と既存キッチンの処分費、施工費を含め100万円でそれに対して諸経費が18万円と記載されていたとします。
キッチン取り換え工事なので工期は1日で終わるようなら、その諸経費は妥当な金額なのか疑問に感じても不思議ではないでしょう。

表1 経費率=18%

名称 仕様 数量 単位 金額
システムキッチン 見積No 0001参照 1 700,000
取り外し及び処分費 1 80,000
取り付け施工費 1 150,000
配管手直し施工費 1 70,000
1,000,000
諸経費 経費率18% 1 180,000
合計 1,180,000

 表2 経費率=直接工事費の30%

名称 仕様 数量 単位 金額
システムキッチン 見積No 0001参照 1 700,000
取り外し及び処分費 1 80,000
取り付け施工費 1 150,000
配管手直し施工費 1 70,000
1,000,000
諸経費 直接工事費の30% 1 90,000
合計 1,090,000

 この例(上の表)のように一概に経費率だけで判断しても実際は諸経費金額が高いとは言えない場合もあります。
表3 経費率=15%

名称 仕様 数量 単位 金額
IHクッキングヒーター 1 280,000
取り換え費 取り外し及び処分費共 1 20,000
300,000
諸経費 経費率15% 1 45,000
合計 345,000


例えばこの表3のようにほぼ商品代金なのに諸経費に15%も上乗せしてしまうと「その経費は何のお金?」と言われても仕方ないでしょう。
このような家電を取り替える工事は家電量販店で購入すれば諸経費が掛からないのが一般的です。
なぜなら建築業と違って家電量販店は物販業だからで、服を買って諸経費を取られないのと同じです。

4. 会社によって違う諸経費の扱い方

お客様満足度を重視しているような会社では利益率を下げてでも、お客様が納得できない(表3の)ような金額は見積もり内訳には記載すらしないのが常識です。
「会社の決まりですから」と、何でもかんでも諸経費として一定率上乗せする会社は融通が利かない会社と判断されても仕方ありません。
思わぬトラブルが発生しても融通は利かないと思って間違いないでしょう。

利益重視の会社には敢えて諸経費率を上げて値引き材料にしていることがあります。
「いやそれは値引きではないでしょう、元々必要ない経費では・・」とありありと思えるような表示がしてあるので少し注意をして内訳書を検証すれば見抜けます。
例で挙げた表のように「経費率18%」などとわざわざ記載はしないので計算してみないと分かりません。

建築や土木の業界で諸経費を頂くのは常識となっているので、それをいいことに実際は経費の掛からない工事でも一律に上乗せして利益とすることは往々にしてあることです。
通常は工期が長くなるほど諸経費も膨らんでくると考えれば想像できますが、工期が1日や2日、ましては半日など、リフォーム工事とも言えないものにまで諸経費を上乗せするのは、「邪魔臭い利益の出ない工事はしたくないので断って頂いて結構です」と言わんばかりです。

お客様からあまり質問の少ない諸経費ですが、一度「この諸経費はどのようにして計算してあるんですか?」と質問してください。
その計算式や意味合いを素直に答える姿勢を伺っただけで、その会社の理念まで見えてくるかも知れません。
要はお客様満足度重視の会社か、利益重視の会社かを見抜くことができればいいのです。