屋根最大のデメリットは塗装メンテナンス




車が買えるほどの塗装メンテナンス

家を建てたりリフォームをする時に必要な予算(イニシャルコスト)は第一に考慮しなければなりませんが、意外に疎かにされているのが建物の維持費(ランニングコスト)です。

一般的にはイニシャルコストとランニングコストはバランスが大切で、どちらかに偏り過ぎた計画はお勧めできるものではありませんが、屋根に於いては塗装メンテナンスこそが大きなランニングコストとなっているのは周知の事実です。

目次
1. 屋根メンテナンスから分類すると
2. 焼き瓦を勧める理由は塗装メンテナンス不要だから
3. 単純乾式瓦屋根工法のメリット
4. 屋根と外壁メンテナンスの矛盾
5. 高額な塗装メンテナンス

1. 屋根のメンテナンスから分類すると

雨風や紫外線などを直接受ける屋根や外壁は傷みも早く、経年劣化は屋内とは比較にならないと考えておくべきです。
特に近年の異常な天候では尚更です。

屋根や外壁には一生メンテナンスをしなくてもいいといった絶対的なものはありませんが、メンテナンスを最小限に抑える材質や施工は存在します。

家の部位で一番劣悪な環境に置かれ耐久性を求められるのが屋根です。
その意味からも予算を掛けたくないからと安価な材料でリフォームをしてしまうと、将来高額な維持費に後悔する事にもなりかねません。

屋根材の材質を一般的に分類するなら粘土系(日本瓦など)、金属系(ガルバリュームやステンレスなど)、セメント樹脂系(セメント瓦やセメントを含んだスレート瓦、樹脂繊維セメントなど)となりますが、私が考える分類は塗装メンテナンス必要屋根材と塗装メンテナンス不要屋根材の2分類です。

和風の日本瓦屋根を塗装メンテナンスしているところなど誰も見たことがないと思いますが、焼き瓦は塗装メンテナンス不要屋根材の代表でもあります。
それに比べセメントと樹脂を使った瓦やスレート瓦、トタン屋根などは塗装メンテナンスが必要です。

これらの塗装メンテナンス必要屋根材は一概にこれが良くてこれが悪いとした絶対的評価は難しく、施工方法や環境によっても大きく評価の分かれるところです。

2. 焼き瓦を勧める理由は塗装メンテナンス不要だから

瓦のズレや割れた瓦の交換、漆喰の劣化、又はその点検もメンテナンスですが、直射日光や風雨にさらされて劣化した表面を塗装によって復活させるというのが概ね屋根のメンテナンスになる屋根材が多くあります。

一度塗装メンテナンスをすると次のメンテナンスまでの間隔や耐久性能は屋根材の材質ではなく、その塗料の性能によって変わることになります。
つまり塗装後は屋根材の品質ではなく高額な塗料ほど長持ちし、安価な塗料は次のメンテナンス時期を早めると言うことになるのです。

屋根の塗装メンテナンスには必ずと言っていいほど足場仮設工事や安全対策工事を伴うので、ほとんどの場合半端な金額ではありません。

リフォームや新築で屋根を検討する場合に、長く住もうと思っているのなら少しくらい高くても塗装メンテナンスが必要ない屋根材を選んでおくのが賢明です。

塗装メンテナンスが必要ない屋根材を価格の安い順にあげると焼き瓦、ステンレス、銅板、茅になります。

このうち高額な銅板は神社などでは使いますが民家ではお勧めできません。
瓦の下流で使うと酸性雨によって穴が開くデメリットがあるからです。
それ以外の金属やセメント樹脂系の屋根材は将来塗装メンテナンスが必要で維持費も相当必要になりますが、塗装メンテナンス不要の屋根材はイニシャルコストは安くないもののランニングコストはほとんど掛かりません。

3. 単純乾式瓦屋根工法のメリット

昔から日本建築で使用されてきた焼き瓦は、言うなればメンテナンスフリーに近い屋根ですが、棟(屋根の一番高い所)が一番のデメリットになっていました。
見栄えを良くするために土や漆喰を使って多くの瓦を積み上げる工法は屋根を重くするだけではなく工期を長くし、イニシャルコストを押し上げていました。

そればかりか漆喰などを多く使うことによって経年劣化によるメンテナンス時期を早めていたのです。
そこでお勧めなのが施工コストを抑え軽い屋根にするために、棟に漆喰などを使わない乾式工法です。

単純な乾式工法の焼き瓦施工は工期短縮と施工費軽減、そして屋根を軽くできることから耐震性能アップもメリットになります。
そして一番のメリットが塗装メンテナンス不要だということです。

4. 屋根と外壁メンテナンスの矛盾

屋根の塗装メンテナンスと外壁の塗装メンテナンスを別々に考えることはランニングコストを無視することになります。
屋根の塗装メンテナンスと外壁の塗装メンテナンスを同時に行うのは足場仮設工事の無駄を省く他の理由はありません。

そのため屋根材の塗装メンテナンス時期が来ていなくても外壁のメンテナンス時期に合わせて屋根のメンテナンスをしなければならなかったり、逆に屋根の塗装メンテナンスをしなければならなくてついでに外壁の塗装もするといった矛盾が生まれます。

ところが屋根と外壁が同じメンテナンス時期を迎える材質を選ぶことは不可能に近いと言っても過言ではありません。
例えばまったく同じ材質のガルバリウム鋼板で屋根と外壁を仕上げたとしても、その環境の違いからメンテナンス時期が変わってくるからです。

もし屋根の塗装メンテナンスがなければ外壁だけのメンテナンス時期を選ぶことができるのでこれほど効率的なことは他にないでしょう。

5. 高額な塗装メンテナンス

「料金は少し高くなりますが外壁と屋根の塗装を同時に行うと足場などの仮設工事が一度で済むので塗装メンテナンス費用の節約になります」と言うのはリフォーム営業のよくあるトークです。
最もな話なので異論はありませんが、どうしても先ほど書いた矛盾は拭いきれません。

平均的な最近の住宅の屋根面積は100㎡(約30坪)程度です。
その屋根の塗装をフッ素などの長持ちする塗料で塗装すれば、坪単価5000円としても単純計算して15万円になります。
実際には高圧洗浄費や養生費なども加算されるので20万円以上になることは稀ではありません。

しかしこの金額には足場などの仮設工事は含まれていません。
足場工事を単純計算すると230㎡の足場でも単価800円として184000円になりますが、これも塗料の飛散防止養生費や安全対策費、仮設トイレなどを加えると20万円以上になるのは間違いないところです。

つまり延べ床面積40坪程度の住宅屋根の塗装メンテナンスだけでも最低40万円以上は掛かかるのが相場です。
実際には付帯工事として軒天や破風鼻隠し、雨どいなども含めることになり、せっかく足場を組むので外壁やバルコニーもという風に追加されていきます。

前に書いたように外壁の塗装はメンテナンス時期が来ていなくても、メンテナンス費用の節約する観点から見積もりに加えることになるのです。

そうなればどう安く見積もっても100万円以上になるのは必至で、屋根外壁の塗装メンテナンス工事の諸経費も含めた合計金額が150万円程度なら相場と言ってもいいくらいです。

150万円あればちょっとした新車が買えるほどと考えると、屋根の塗装メンテナンスから始まった住宅の維持費がどれだけ大きな負担になるのか想像できるのではないでしょうか。