田舎の空き家の価値




負の財産の空き家を手放したいなら

都市とは掛け離れているとしても過疎と言うほどでもない私の住む町も、急激に空き家が増えています。
組と呼ばれる地域最小単位の中に18戸の住宅が建っていますが、そのうちの4戸が既に空き家になっています。
全国に増え続けるこれらの空き家を所有している人は、その負の財産にどう方をつければいいのでしょう。
今回は人口数十万以上の都市部にある中古物件ではなく、いわゆる田舎の空き家問題を考えてみます。

目次
1. 空き家の価値は時間と共に下がり続ける
2. 空き家の価値はどこにあるのか
3. 空き家の不動産価値
4. 空き家に住んでみて価値を見極める

1. 空き家の価値は時間と共に下がり続ける

都市部の賃貸住宅でサラリーマンを続け定年退職後の第二の人生に田舎暮らしを希望する人や、コロナ禍の影響などで職を失って移住したい人など理由は様々でも近年空き家を探している人が増えているようです。

しかしこの空き家探しは簡単ではありません。
物件は数多くあっても自分の欲求を満たす物件となると多くはないようです。
そんな中で空き家の不動産需要が停滞しているひとつの原因となっているのが売り手と買い手のマッチングリスク意識の認識の違いです。

木造住宅は空き家になった日から急加速して朽ちて行きます。
特に換気扇も回さず窓を閉め切ってしまえばその朽ちるスピードは人が住んでいる時の何十倍も早くなります。

もしその朽ちるスピードを遅らそうと思うなら家の中の空気を換気扇や自然換気で常時動かし、日光を入れるなどの管理が必要になります。

たまに私が住む町の空き家バンクの情報を見ていますが、何年も前からずっと同じ空き家が売りに出されていて中には売りに出されてから10年を超す物件も少なくありません。
しかも写真は最初に撮られてから更新はされず、価格も同じままになっていたりします。

空き家が朽ちる順序は家の内部からですが、特には床下や屋根裏のような見えない暗いところから始まります。
光が当たる外壁や屋根の朽ちる頃には既に手遅れ状態なので、何百万円も支払って解体しなければならなくなります。

要は空き家物件は時間が経つにつれ急速に価値が下がっていると言うことですが、価格を下げないのは所有者に売る気がないか売れ残った場合のリスク認識を誤っているかでしょう。
元々家には価値がなく土地だけの価格だとしても解体に何百万もかかるならその土地の価値も見直すべきだからです。

例えば200万円の土地の上に解体費300万円の朽ちた家が建っていたら、誰も200万円出してその土地を買ったりはしません。

2. 空き家の価値はどこにあるのか

田舎へ移住するために空き家を求める人の欲求は様々ですが、以前から多いのが「豊かな自然の中で暮らしたい」や「広い土地を安く手に入れたい」などです。
つまり言葉を換えれば「駐車場もとれない狭い土地はいらない」「いくら広くても高い土地はいらない」ということで安いと感じない空き家は売れないということです。

そして田舎の空き家の価値は不動産価値だけではありません。
周辺の自然環境や災害リスク、地域性などは移住する人にとって最も重要視しなければならない価値でもあります。
どれだけ不動産価値が高くて価格が安くても生活環境価値が低ければ買い手は見つかりません。

どちらかと言えば生活環境価値を不動産価値よりも大切に考える人が多くなっているということでもあります。

空き家になって売り出されている理由は、住んでいた人が高齢で亡くなられたり、ひとりで生活できなくなって引っ越しされたといった経緯があります。
主にその空き家の所有者は都市部で生活をしている身内ということになりますが、生まれ育ったとはいえ長年都市部で生活をしていると、田舎の不動産価値の概念に大きな隔たりがあることに気付かないこともあります。

3. 空き家の不動産価値

木造住宅の場合税法上の価値は22年でゼロになりますが、それ以後も固定資産税評価額は時価よりも高い設定で残っています。
そこで所有者は固定資産税を支払っているのだからまだ価値はあると勘違いをしている場合もあります。

実際に空き家を探している人からしてみればどこかに魅力のある家でない限り見向きもしないということになります。
その魅力とは縁から見える景色が素晴らしい古民家や、少し手を加えるだけで蘇る家、DIYで何とかなりそうな家などです。
つまり買い手は将来の生活を夢見て価値を見出すと言ってもいいのです。

しかしその価値が売り手の金銭的価値になると言うことではありません。
これはあくまで買い手の心を動かす価値だと言えます。
広い土地に心を動かす価値のある家が乗っていると思えばいいでしょう。

坪1万円程度の時価の土地100坪の上に築40年の心を動かされる家が乗っているとしたなら100万円で売れる可能性が高いということになります。
空き家バンクにはそんな空き家が堂々と400万円や500万円で載っていますが、どう考えても売れるはずはないでしょう。

ましてや今の空き家市場は買い手市場と言えるほど空き家の数が増えているのです。
空き家になった時点で所有者は逸早く売ってしまわないと価値はどんどん下がり最終的には何百万支払って解体しなければならなくなると言うことです。

100万円の土地に解体費が300万円の家が乗っているとするなら、マイナス200万円の不動産価値ということになります。
その上何もせず放置しておけば毎年固定資産税などでマイナス価値が増加することにもなりかねません。

4. 空き家に住んでみて価値を見極める方法

ここでも都市部で取引されている中古物件ではなく田舎暮らし的な空き家を対象に考えてみました。
そしてリフォーム済みなどの中古物件ではなく何も手を付けられていない状態の空き家を意味します。

空き家バンクなどから田舎にある空き家を見に行くと、想像していたのと違うことがよくあります。
情報には書かれていなかった建物があったり宅地面積が想像以上に広いなどです。

解体しなければならない使い道のない建物はマイナス評価しなければならないし、想像を超える広さの土地は管理の難易度を想像するべきです。
建築士の専門検査員にインスペクションを依頼するなら問題はありませんが、建築の知識のない買い手が自ら目視で調査するのなら事前に調査項目などをノートに記入して望む必要があります。


もちろん不動産価値より優先しなければならない生活環境価値は自身の調査が必要です。
例えば敷地は広くても他人の土地を通らなければ車で入ることができないといった空き家も少なからず存在します。

近隣の人付き合いや地域の決まりなども意外に落としやすい生活環境価値のひとつです。
これらの調査はその付近での聞き込みが情報を得る一番の方法です。

可能であれば最初は賃貸で1年程度入居して問題がなければ購入するというのが最もお勧めな生活環境価値の判断方法です。
四季を通して居住すれば普段なら気付かない問題を知ることも可能です。
玄関内部土間が梅雨時期だけ水が浮いたように結露が激しいなどの問題は住んでこそ気付く問題だからです。

生活してみて初めて気付く問題は住居以外にも多くあります。
買い物の距離やゴミの処理、災害リスクや雑草の管理などは住んでみなければ実感できないことです。
空き家を持っている人は空き家の所有者になった時点から心に大きな負担を持つことになり、空き家を早く売却することは金銭的価値以上の心の豊かさを手に入れる手段だとも感じます。