家は天体を意識しないと損をする




窓の位置で光熱費に差が出る

太陽の位置や地球の動きは誰にも変えることはできません。
住んでいる家の周りにはどうすることもできない条件が存在します。
気候や山などの自然、ビルや工場などの建物などです。
リフォームや新築のプランをするとき、そのようなどうすることもできない条件を見落としがちになります。

どうすることもできないものと聞けばマイナスのイメージしか沸きませんが、実は家を考える時それらのどうすることもできない条件を利用したりプラスに考えることができます。

【 目次 】

1. 天体を意識しなければ損をする

2. リフォームや新築の天体利用

3. 窓の位置と朝の太陽

4. マップで日の出、日の入りを確認する方法

1. 天体を意識しなければ損をする

今でも天体を意識した設計プランをする会社は稀だと言えます。
意識する天体とは主に日の出、日の入り、日照のことで太陽の動きを意味します。
まったく意識していないとは言いませんが、おそらく概ねとか大体といったアバウトで感覚的な捉え方が多いと思います。

例えばアパートの物件探しを例にとるとその意味が分かります。
「この物件は南にベランダがあって日当たりがいい部屋ですよ」とか説明を受けて、「確かに南向きの部屋になってるから申し分ない」と思ったりすることです。

確かにこの説明は間違いではありませんが充分ではありません。
もしその裏に次のような事実が隠れていたなら好条件な物件とは言えません。
「ほら、そこの高いビル、この部屋から見ると南東に20度の位置に建っています」
「今は夏なのでビルの影はこの部屋に影響していませんが、11月の中旬から2月の初旬まではビルの陰になって昼頃までは光が入ってこないんです」
実はアパート自体方位通りではなくベランダも20度南西を向いていたのです。


不動産や建築会社の説明だけで納得するのではなく、自分で調べて確認するのが賢明です。
冬に日差しを直接受ける部屋は日が当たらない部屋に比べ最低でも2度、断熱や窓の大きさによっては10度以上も差が出ることがあります。
これは日照による温室効果がもたらす恩恵ですが、これだけ違えば冬の暖房費にも大きく影響するでしょう。

しかし部屋が南を向いているという条件だけではその恩恵を受ける条件が揃ったことにはなりません。
例えば南側の隣地に建物がある場合はその建物の高さや位置によって日照条件に大きく影響を受けるからです。
太陽が一番低くなる冬至にその建物に日照が影響されないか調べることです。
また将来その隣地に高い建物が建設されないかという予測も大切です。

もし南には日照を遮るものがないとしても南西や南東に高いビルや山がある場合はその影響を考えるべきです。
例えばその高いビルが真西にある場合は夏の西日を遮ってくれる可能性が高いと判断できます。
正確に言えば3月21日(春分の日)、9月の23日(秋分の日)頃の太陽は真西に沈んで行きます。
つまり9月の残暑をそのビルによって軽減できる可能性があると言うことです。

2. リフォームや新築の天体利用

本来どの窓にもそこにある理由が存在しています。

「この窓は北の部屋で暗いから光を入れたいため」とか「このローカ突き当たりの小さな窓は風の抜けをよくして家の換気効率を上げたい」といったことです。

一度自分の部屋の窓を見て、この窓は何のためにあるのか考えて下さい。
答えは日常の生活の中で見えてくるものです。
例えば「この東の窓は冬の朝日が気持ちよく入ってくる」といったことです。

そこでもう少し詳しく掘り下げると、冬に朝日が気持ちよく部屋の奥まで入ってくるのに夏は何故か朝日が少しも入ってこないといったことを思い当たることがあります。
その理由は夏だけ偶然隣接する建物の陰になっていたといった理由です。

太陽が夏と冬では登る位置が変わることによって、その窓が理想的な配置になっていたということです。

つまり家の居住性は天体や気象、隣接する建物や山などの自然に大きく影響を受けると言うことです。
それらはどれもどうすることもできない条件です。

どうすることもできないのなら逆に利用できないか考えるのが賢明です。
先ほどの隣接する建物は偶然だったかもしれませんが、意識的に利用することもできます。
特にリフォームする人はリフォーム会社や設計士に任せきりではなく、自分でリフォームプランを確認することをお勧めします。
何故なら長年住んで一番その家の環境や条件を分かっているのが施主だからです。

3. 窓の位置と朝の太陽

特に窓の位置や大きさを決める基準を太陽の動きに準拠させるのもひとつの方法です。
例えば夏の西日が直接当たる真西から北にかけての窓は風を抜くためだけの小さな窓にすると言ったことですが、冬の光は少しでも長くほしいので南西の窓は大きくするなどです。

家の壁が東西南北に真っすぐ向いているのなら、東の窓は部屋から見て右寄りに付けることで夏の朝日は少なく冬の朝日は多く部屋に取り込むことができます。
日が昇る場所を実際に調べてみると想像以上に季節によって差があることが分かります。
その太陽の位置を考えて窓の位置を決めるのがお勧めです。

上の図は真東を向いた8帖間の平面図です。
AとBは窓の位置ですが、どちらに窓を設置するのが冷暖房効率がいいのでしょう。
夏至の日の出は真東から北方向に30度動きます。
残暑が厳しい9月の終盤の太陽が夏至だと考えて下さい。

もしこの窓がテラス窓だとしたら床に当たる光の面積だけでもBに比べAは2倍以上になります。
もちろん差し込む光や熱の容積も同じだけ増えることになるのです。

12月終り頃の冬至の日の出は南方向に30度動くので正月前の寒い冬の朝日がこのように差し込みます。
つまりAの窓位置に比べBの窓位置は年中を通して太陽熱を効率よく使うことができるという訳です。
窓をB位置にするだけで年間の光熱費を大きく下げ、今問題になっているCO2削減にも貢献できます。

これまでの家でよく見かけたのは、当然のように真ん中に窓を配置してその両脇に壁を作った部屋です。
そのような窓の配置だと夏も冬も同じ条件になってしまいます。

ひとつの窓でもどちらかに寄せると考えただけでもこれだけの違いが出るのですから、窓の大きさや窓の高さなどでも大きく違いが出ることを分かって頂けると思います。

4. マップで日の出、日の入りを確認する方法

先ずグーグルマップの航空写真で自分の家を見てみます。
そうすると自分の家の方向を知ることができます。
リビングの窓がどの方向を向いているのかや、寝室は家のどの方角にあるのかなども知ることができます。
実際に見てみると、想像以上に方向が傾いて見えるものです。
グーグルマップでは上が北、左が西、右は東、下が南です。

家を起点に水平に線を引くと、春分秋分のお日様はその線の上を家から見て右から昇り左へ沈みます。
次に日の出、日の入りマップで夏至と冬至の太陽の位置を見てみます。

※参考にしたサイト
日の出、日の入りマップ

https://hinode.pics/

最初からこのマップで見てもいいのですが、グーグルマップのように地図の倍率を上げることができません。

そして夏至の日の出、日の入りは家を起点に30度北に動き、冬至は30度南に動きます。
それを実感出来るサイトが日の出、日の入りマップです。

※夏至の日の出、日の入り(2022年6月21日)

※冬至の日の出、日の入り(2022年12月22日)

見て分かるように夏至と冬至では太陽の位置が60度も違います。
自分の家を中心に日の出、日の入りマップで見てみるとハッキリと季節で変わる太陽の位置を確認することができます。