土壁の撤去の必要性は?
昭和の後期に建てられた家には、土壁で施工された建物が多く残っています。
部屋がクロス張りであっても壁内部は荒土壁といった家も少なくありません。
そんな土壁の家のリフォームでよく相談を受けるのが、土壁撤去の必要性です。そんな場合に現状の生活環境や状態だけで業者に相談すると、間違った答えが返ってくることにもなりかねません。
そうならないためにもある程度の知識を持った上で、欲求の優先順位を決めて相談することをお勧めします。
土壁に関する相談内容と答え
「家も古く土壁だから寒い」
確かに土壁の熱伝導率は現在の断熱材に比べて高いのですが、寒いのは他に原因があります。
・窓が大きく一枚ガラスなので寒い。
・床にも天井にも断熱材が入っていないため寒い。
・仕上げまで土壁の場合は施工後間もなく土壁の乾燥によって収縮し、柱と壁の間に隙間ができて機密性がないため寒い。
「壁が結露するのは土壁のせいでは?」
・荒土壁で大壁仕上げ(柱が見えずクロスなどの仕上げ)の場合は、柱と壁にできた隙間から外気が侵入したり、根太工法のため床下の冷気が壁内に侵入したのが原因と思われます。
「土壁で耐震性が気になる」
・確かに土は重いため耐震を考える上では撤去するべきでしょうが、その場合はそれに変わる筋交いなどの有無や金物補強を考えて下さい。
・特に二階は重い土が直接柱や梁に負担をかけています。
・耐震を優先するなら壁土だけでなく屋根も軽くする必要があります。
昔は瓦の下に土を敷く施工もあり、棟は何重にも瓦を積み重ねているため、かなり重い屋根になっています。
見た目より耐震を優先するなら、棟瓦も一重だけにするなどして軽くすることをお勧めします。
「綿壁が落ちて困る」
・荒土壁がしっかりしていれば綿壁だけを取り除き、他の材料で塗りなおすことも可能です。
土壁のメリット
土壁は自然素材なのでホルムアルデヒドをほとんど含んでいないため、シックハウスなどの心配がないばかりか、調湿作用で化学物質を吸着してくれるとも言われています。
しかしその効果は柱や土壁を隠してしまう大壁クロス仕上げにしてしまえばほとんど消えてしまいます。
土壁の一番のメリットと言ってもいいのは、遮音性に優れていることです。
この効果はたとえ大壁クロス仕上げにしようと変わることはありません。
遮音は重い材料ほど効果が高いからです。
土壁撤去の必要性まとめ
・耐震を優先するなら土壁や重い棟瓦は撤去して、筋交いなどの補強を充実させる。
・遮音を優先するなら土壁の隙間を補修してそのまま利用する。
その場合は窓もペアガラスに交換して内窓を設置すれば効果が上がる。
・断熱を優先するなら土壁を置いたまま断熱材を併用して窓も断熱サッシに変える。
・予算を優先するなら土壁撤去は多くの手間や処分費が必要になるので、そのまま利用する。
・調湿作用を優先するなら大壁にはせずに珪藻土などで仕上げる。
先ずは何を優先するかを考えて答えを出して見てはいかがでしょう。
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