今と昔の和室の違い





和室が落ち着く理由

和室は心が安らぐと今もなお人気があり、一部屋は必ず和室がほしいと要望される人が多いのも事実です。
前にもこのブログで書いていますが、和室が落ち着くのは単に和のデザインだけによるものではなく、吸音性が高く調湿性にも優れていることもその要因だと考えることができます。

しかしその吸音性や調湿性といった効果の高かったのは昔の和室であって、今作られている和室の効果はそれほどではなくなっています。
今の和室はメンテナンスや掃除の容易さなどが優先され、予算を抑える理由からも自然素材も使わなくなっているのです。

1. 今の畳が調湿しない理由
2. 障子も調湿しなくなった
3. クロス仕上げは調湿しない
4. 落ち着き性能を満たす工夫

1. 今の畳が調湿しない理由

昔の畳は藁床(わらどこ)といって畳の内部は藁(わら)でした。藁(わら)とは稲作などで作られるイネ科植物の茎を干したものなのですが、農業の機械化で副産物の藁(わら)を取ることがコスト高などにより難しくなりました。
その藁床にイグサという多年草植物で表面を仕上げたのが昔の畳です。
そのような畳は今も生産されているようですが、数も少なく高価なようです。
今最も多く生産されハウスメーカーやリフォームで多く使われている畳の内部構造はスタイロフォームのような軽い発泡性断熱材を心材にしています。
表面はイグサではなく主に和紙などが多く出回っていますが、表面が撥水加工してあるため、水をこぼしても直ぐには染み込むことはありません。
逆の言い方をすると、それらは吸湿しないということになり、強いては湿度の調整などの期待はできないと言えます。

2. 障子も調湿しなくなった

同じように昔は障子や襖は紙を貼っていました。障子紙は湿気を吸ったり吐いたりと部屋の湿度をコントロールする役割もあったのです。
しかしそのデメリットの変色や破れによるメンテナンスが多かったことで、変色しない破れないアクリル製の商品へ変わっていきました。
当然アクリルに吸湿性や吸音性もなく、デザイン以外の落ち着き性能はなくなっています。

3. クロス仕上げは調湿はしない

和室の壁も昔は荒土壁に土壁仕上げであったため、吸湿性に優れ吸音にも効果がありましたが、今はプラスターボード下地に和風のビニールクロス仕上げに変わりました。

壁は柱の見える真壁仕上げであっても土壁は使わなくなり、現在は柱の見えない大壁クロス仕上げのスタイロ畳だけで和室と呼んでいることが多いと感じます。
プラスターボードに多少の吸湿性能はあるもののクロスで塞いでしまえば、土壁と比較した場合の吸湿や吸音性能は低いと言わざるを得ません。
現在では畳床や断熱材でインシュレーションボードと言われるような木質ボードも製造されていますが、メンテナンス以外の性質で昔の自然素材に勝るものはないでしょう。
昔の和室と今の和室をメンテナンス性能ではなく、落ち着き性能で評価すると断然昔の和室が勝ると言っていいでしょう。

4. 落ち着き性能を満たす工夫

落ち着き性能とは心が癒されるデザインに加え静けさをもたらす吸音性能や涼しいとか暖かいといった癒し感覚をもたらす調湿性能などと解釈して下さい。

例えばリフォームで高価な自然素材の材料が使えず落ち着き性能を上げたい時は、昔の畳や壁に変わるインテリアを置いて部屋をデザインすることもヒントになります。
例えば唐の椅子を置けば吸音性が上がり、ニットなど繊維製品の雑貨は吸湿性に加え調湿性も期待できます。
和風のカーテンも吸音吸湿効果が高いと思われますが、カーテンの設置が難しいのであれば、着物などをリメークした布地の物を壁に垂らすなどすれば効果は更に高まります。
心が安らぐ部屋を求めるなら、視覚だけでなく五感から癒される効果を望まれることをお勧めします。