ピアノを置く部屋が分かる





ピアノを安全に楽しく親しむために!

高度成長期の昭和45年頃からピアノが多く売れましたが、戦後の貧しい時代に子どもであった人たちが親になって、心豊かな暮らしを自分の子どもに託した人も多いのではないでしょうか。

その時代に買われたピアノが今もなお多くそれぞれの家庭に残っています。
特にヤマハなどのピアノは長寿命で電化製品ではないため、何年経っても壊れることがなく、親が買ってくれたと言った理由で捨てることができないでいます。
しかしいざリフォームとなった時や、引っ越しをしなければならなくなった時、その置き場所をどこにするか悩むことになります。

1. ピアノの大きさと重さは?
2. ピアノの置き場所は?
3. ピアノは置き場所で音が変わる?
4. ピアノの防音はどうする?
5. ピアノの引っ越しは?
6. ピアノを引っ越した後に調律は必要?
7. ピアノの管理は?

1. ピアノの大きさと重さは?

通常アップライトピアノと言われる縦型ピアノは間口が150㎝前後で奥行きが65㎝前後です。
重さは250Kg前後ですが、本棚などもいっぱい本を詰めるとそのくらいの重量になるのでピアノが特別に重いという訳ではありません。
畳の上に置いたと仮定すれば大まかにどのくらいのスペースが必要か想像することができます。
アップライトピアノの設置必要面積は、一枚の畳の上に余裕で置けるくらいのスペースなのですが、実際に弾く場合は椅子を置く場所だけが一枚の畳からはみ出る感じです。
一般家庭で多く使われているグランドピアノは、ヤマハではC3と言われる大きさのピアノで間口はアップライトピアノと変わらない149㎝で奥行きが186㎝です。
設置面積を畳で表現するなら、3畳あれば椅子も含めて何とか置くことができるといった感じです。
グランドピアノの重量はヤマハのC3で320Kg程度なので大人の男性で4~5人といったところです。

アップライトピアノとグランドピアノ( ヤマハ YUS3MhC:
C3TD )

    

2. ピアノの置き場所は?

アップライトピアノの構造はピアノの下にキャスター(鉄の車)が4個隅々に付いています。その4点でピアノの重量を支えていますが、現在の建築基準で建てられた一般的な家屋の床組みに耐えられないことはまったくありません。
グランドピアノは脚が3本でアップライトと同じく少し大きめのキャスターが付いています。
これもまた床が落ちるといったことは余程の事がない限り心配ありませんが、それでも床が二重張りでなく12㎜のフローリング一枚で仕上げられている場合は、キャスターが乗る位置辺りを補強しておかないと、床板がたわむ事も予想できます。

地震の時は即座にピアノから離れる

アップライトピアノもグランドピアノもキャスターの下にはインシュレーターというお皿を敷いて動かなくします。
アップライトピアノを畳の上に置く場合、畳を傷めないために敷板という細い板を置いてその上に直接アップライトピアノを乗せていますが、地震の少しの揺れでピアノが転倒する恐れがあり大変危険です。
今ではキャスターをキャッチする構造の敷板も作られていますが、それでもやはり地震での転倒リスクは少なくありません。

そもそも弾力性のある畳の上に安定性に乏しいアップライトピアノを置くこと自体が危険なので、そんなピアノを見た場合は「転倒の危険がある」と注意を促しています。
もし地震で子どもがピアノの転倒にまき込まれることを考えると直ぐにでも対策を考えるべきです。
アップライトピアノの安定性が乏しいと書きましたが、あくまで地震で揺られた場合で、もちろん通常は倒れることはありません。
これらは背の高い冷蔵庫などと同じ意味合いであると想像して頂ければいいでしょう。
和室にピアノを置く場合は、根太レス工法などで床の下地に使う構造用合板(35㎜まで多くの厚みの種類がある)を重ねて畳の厚みに合わせてビスで張り合わせ、畳1帖と取り替えるだけでも転倒リスクは減ります。
その場合に使用するのは滑り止めの付いたインシュレーター(ピアノの下に敷くお皿)がお勧めです。
畳の上に敷板を敷いて直接ピアノを乗せている状態で地震が発生したことを想像してみて下さい。
震度3であったとしても4個のキャスターの内の一つでも敷板から外れてしまえば更に安定性を失うことは容易に想像できます。
アップライトピアノの重心は後ろ側にありますが、前のキャスターが外れた場合は重心も変わります。
更に日頃から気を付けたいのは、ピアノの近くでは就寝しないことや、ピアノの上に物を置かないことです。
ガラスケースに入った人形などは言うまでもありません。

3. ピアノは置き場所で音が変わる?

ピアノをどこに置いてもピアノ自体の音が変わることはありませんが、部屋の状況によって反響が変わり、そのリバーブ音(残響音)によって音が濁って聴こえたりします。
ピアノの構造は鍵盤を叩くことによって伝えられたフェルト製のハンマーが230本張られた弦を打ち、その振動が反響板を通して増幅されるようになっています。

その反響板の振動が空気振動となって広がりますが、フローリングなどの板張りの床やタイル調の床などでは吸音しないため反響音となって返ってきます。
そのような床の場合は、床に振動を伝えないためのインシュレーターや吸音してくれるマットなどを敷くことをお勧めします。

ピアノ本来の音を楽しむために吸音の工夫をする

例えば6帖程度の広さの部屋にアップライトピアノを置いたり、8帖程度の部屋にグランドピアノを置く場合、その部屋の壁や天井がクロスで床がフローリングで仕上げてあった場合の反響度合いはとてもそこでピアノを楽しむと言ったものでないことは容易に想像できます。
そのような部屋の場合は吸音してくれる工夫をすることが先決です。
床は絨毯系の物を敷き、
クロス張りの天井にも布地を吊るしたり、ニットの繊維雑貨を置くなどの工夫をして頂きたいところです。
それに加えて最も吸音に効果があるのが厚手のドレープが多く、面積の広いカーテンです。
外壁に面した壁で、窓の大きさには関係なくとにかく面積の広いカーテンを吊るしてみて下さい。
既製品ではないでしょうが、壁全面が隠れるくらいのカーテンでもいいくらいです。
そのようにできる限り反響を押さえ、吸音する方がピアノ本来の音を楽しむことができます。
ピアノを置くためだけの部屋として考えるなら音楽専用の吸音材も販売されているので検討してみるのもいいでしょうが、音を扱う専門の建築業者に依頼すると効果は期待以上で費用もそれなりに高額になります。
絨毯やカーテン、繊維雑貨くらいなら予算も抑えることができるので試す価値も高くお勧めです。

4. ピアノの防音はどうする?

特に夜などは屋外に音が漏れやすく、ピアノの音がトラブルの原因になることがあります。
他の記事でも書いていますが、完全防音にするには高額な資金が必要になり現実的ではありません。
完全に遮音ができない場合は、静まり返った夜はピアノを弾かないといったマナーは当然のことですが、お勧めできる一番の防音対策は近隣とのコミュニケーションです。
例え昼間とはいえ、隣から聞こえてくるピアノの音を不快に感じる人も多いはずです。
ましてや知らない人ならその不快感も大きくなり、自分たちが知らないだけで夜勤の人が昼間に就寝していることも考えられます。
そのような時、コミュニケーションさえ取れていれば、近隣のライフスタイルを把握でき、迷惑を最小限に抑えることも可能です。
ピアノを置く部屋をリフォームする時は、壁は12.5㎜のボードを2重張りしたり、断熱材は重いロックウールを使って、その上遮音シートを張り、窓はペアガラスの物を使用し、更にペアガラスの内窓を付ければ完全とは言えなくてもかなり遮音性能は上がるので参考にして下さい。

建物がRC(鉄筋コンクリート)造ならコンクリートが重いので遮音に関しては言うことないのですが、ピアノの外敵とも言える湿気対策の方が問題になります。
ピアノの中に入っている多くの部品でできたアクションと言われる緻密な機械はほとんどが木材で、当然湿度には敏感です。
更に金属性で1本が90Kg前後の張力で張られたピアノの弦も、湿度が高いと錆びてチューニングピン付近で切れてしまうこともあります。
RC構造の部屋にピアノを置く場合は換気を心掛け、部屋内の湿度が高くならないような対策も必要になります。

5. ピアノの引っ越しは?

安全のためにもピアノの引っ越しや移動は専門の業者に依頼して下さい。
ピアノは金庫などと同じように、重く大切に扱う物とされているため運賃は他の物(冷蔵庫など)と比べ高いと思われます。
特に2階へ設置する場合はレッカー車などが必要になりかなり割高になります。
グランドピアノはかなり大きなイメージがありますが、運搬時は3本の脚やペダルを取り外し、寝かして運びます。
2階へ設置する場合も160㎝幅以上の開口できる窓があれば入りますが、移動を依頼する前に専門業者に確認する方が確実です。


6. ピアノを引っ越した後に調律は必要?

ピアノを運んだからといってピアノ自体が故障するといったことはありません。
ただ、運ぶ状況によっては音程に変化を及ぼす可能性は否定できません。
運ぶ状況とは、夏で外気温が高い場合や、トラックなどの振動に影響するのです。
ピアノを引っ越した後、音を聴いてみて音程のズレなどが気になってから調律を依頼しても遅くはありません。
調律という作業は、1本あたり90Kg前後で張られた230本の弦をチューニングハンマーという道具でチューニングピンを回して厳密に音程を合わす作業です。
調律の他にも整調や整音などがあります。
整調は弦を叩くフェルト製のハンマーを動かすアクションという機械を調整し、整音はそのフェルト製ハンマーの硬さを針やヤスリで調整し、音質や音色を整える作業のことです。
整調はピアノを弾く時のタッチに影響を与え、整音は音質や音色、調律は音程を整える作業です。
引っ越しの後、その三つの内どれかに違和感を感じるなら、調律師に相談し見積もりを取ってから依頼して下さい。
引っ越し後、概ねその三つに違和感を感じないならそれらの作業を行う必要もないでしょう。

アップライトピアノもグランドピアノも上部の蓋を開け、その付近を手で探れば調律カードという調律の履歴を記入したカードが入っています。
そのカードには調律の履歴の他、製品名や製造番号が記載されているので、調律を問い合わせる時に役に立ちます。

7. ピアノの管理は?

あくまでピアノは楽器なので大切にしたいものですが、やはり弾いてあげないと振動能力も落ち、アクションやチューニングピンなどの機械部分の調子も悪くなります。
もし使われていないピアノでも大切に管理したいのなら、1年に一度は調律師に依頼して音も機械も整えて頂くことをお勧めします。
それと同時にピアノを置く部屋の環境も整えるといいでしょう。

まったく楽器としての価値を失ったピアノを見る事もありますが、そんな家のリフォームではインテリアの一部として使った経験があります。
大きな古民家リフォームで玄関ホールを8帖程度に広げたプランをし、その広い玄関に使われなくなったピアノをさり気なく置いてみた結果、訪れた方々に好評で、中には弾かれて帰られる人まで現れたとその家の奥様に喜んで頂きました。