これを読めば木のことが分かる




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木造で家を建てるなら木のことも知っておこう

フィトンチッドと言う樹木などが持つ化学物質がありますが、森林浴をすると癒されるのはそのフィトンチッド効果とも言われています。
フィトンは植物を意味し、チッドは殺すという意味でロシアの科学者がその物質を発見したことで命名され、これらの成分に人をリラックスさせる効果があると明かされています。
しかしその害虫を殺す成分が人にとって全てメリットになるとは限りません。

 目次

1. ヒノキチオール

2. 日本のヒノキとスギ

3. 木の含水率

4. 広葉樹の木材

5. 無垢材

6. 集成材

7. まとめ

1. ヒノキチオール

その優れた抗菌力から水虫の薬成分としても有名なヒノキチオールは日本では青森ヒバに多く含まれています。
製材した青森ヒバ材を水に濡らせば強烈な匂いを発しますが、我々人にとっては嫌な臭いではありません。
それこそが最強の自然抗菌成分のヒノキチオールなのですが、カビなどに対しても強力な抗菌力を持っています。
東北地方の総ヒバづくりの家には蚊が三年は入ってこないと言われますが、決して誇張した話しではないことが伺えます。
そのためヒバ材は家づくりで特に基礎の上に据える土台の材料として重宝されていますが、そのヒノキチオールによって白蟻などの侵入を防いでいるのです。
ヒノキチオール成分は台湾ヒノキから発見されたことによって名付けられていますが、日本のヒノキとは違った品種で日本ヒノキにヒノキチオールはほんのわずかしか含まれていません。
しかし中には日本のヒノキにもヒノキチオールが多く含まれているというような間違った認識で無垢材をアピールしたHPやチラシを見ることがありますが、ヒノキチオールは特定の樹種が持つ防御能力なのです。
このヒノキチオールという物質は薬などに多く使われているだけあって低毒性で人には優しい物資だと言えます。

2. 日本のヒノキとスギ

西日本を中心に山々には至る所にヒノキやスギが植林されて今や花粉症や災害の原因とまで言われていますが、ヒノキやスギには何の罪もなく過剰な植林の影響だと言えます。
ヒノキが高品質と言われる特徴は広葉樹のような狂いが少なく加工が容易で高寿命なことでしょう。
法隆寺などの歴史建造物が現在まで維持できているのはヒノキが建材として優れている証しだと言えます。

ヒノキとスギの違い
ヒノキは福島県辺りを境にそれより北では生育しませんがスギは青森県でも自生し、北海道でも造林されています。
そのことからスギは新潟県を除いた中部地方や関東地方より北で柱などの構造材として今も多く使われています。
ヒノキはどこを切っても色が均一で製材が容易なのに比べ杉は芯が赤く二色の断面を持っているので製材が難しいとも言えます。
一般的に柱材などはスギに比べヒノキの方が高額で取引されていますが、管理された山で育てられた高品質なスギや製材ランクで少ししか取れない赤スギはヒノキより高額な価格で取引されることも多くあります。
ヒノキに比べスギは地域品種の種類が多く、品種によって材質や色、曲がり強度(ヤング係数)などの違いも大きく、鹿児島県のヤクスギや島根県のハチロウスギ、奈良県和歌山県のヨシノスギ秋田県のアキタスギなど、ほとんどどこの県にも有名な品種があります。

3. 木の含水率

スギは含水率が高く、山に植わっている時は200%の水分量があり、その水分を落とす方法には自然乾燥と強制乾燥があります。
含水率50%より少なくなると低含水率材と言われますが、今では強制乾燥で含水率を30%以下に落とした杉材も販売されています。
木材は含水率が低い程強度が上がり、それ以上変形することが少なくなるため水分を抜いた製品が求められているのです。
木材に含まれる水分には自由水と結合水とに分けることができますが、自由水は自然に抜けていく水分で結合水とは木の繊維に分子レベルで結合された水分です。
その結合水も長い時間をかければ自然に少しずつ抜けていきますが、その時木が割れるので夜に「パキ!」と音を立てる原因になっていたりします。
木は乾燥すると反ったり大きく割れたりしますが、その分強度は上がると言っていいでしょう。

4. 広葉樹の木材

ヒノキやスギは針葉樹ですがクリやサクラ、ナラやケヤキなどは広葉樹です。
クリは堅くて腐りにくく特に昔は土台や鉄道の枕木などに多く利用されていましたが、その歴史は古く縄文時代から建築材料に使われていたことが分かっています。
ケヤキは木目が美しく堅くてキズが付きにくく、古くから神社仏閣や民家の大黒柱などに多く使われてきました。
民家の大黒柱などには中心部の赤身部分を使って周囲の白い部分は捨てられるので、かなり太い原木でないと立派な柱は取れません。
更に水分が抜けにくく伐採してから何年も寝かせて自然乾燥しないと大きく反って使うことができません。
中には使うのが早すぎて家を建てた後、「ケヤキの大黒柱が家ごと持って行った」と言うような事例を聞くことがありますが、ガッシリ組んだ家でもケヤキの反りには勝てないと言うことのようです。

サクラと言っても建築業界ではカバのことをサクラと呼んでいたりしますが、サクラと呼ばれているカバ材は一般的に安価で床材などで多く使用されています。
本来の桜は地桜などと呼ばれ玄関框などにも使われてきました。
落葉広葉樹の桐は字の如く本来木ではなく草に分類されると聞いたことがありますが、調べるとシソ目キリ科となっています。
前にも紹介しましたが、桐は最も熱伝導率が低い木として知られています。
スギも熱伝導率は低い方ですが、それより更に熱を伝えません。
そして桐は木材の中では最も軽く割れや狂いが少ない最も優秀な無垢建材と言えます。
桐にはタンニンやパウロニン、セサミンなどの成分が含まれ防虫効果が高く、昔からタンスなどに使われてきましたが、時々タンニンなどの成分が浮き出て黒ずむ場合があります。
桐は熱を伝えないので断熱性能も素晴らしく最も多く使ってほしい無垢材の一つですが、現在日本の物は少なく中国などから輸入されていて高額で商品価値も高まっています。

5. 無垢材

無垢(ムク)とは元々仏教用語の煩悩から離れてけがれていないことを表した言葉で、白無垢など婚礼衣装にも使われています。
建築用語の無垢材とはノリを使って製品化した合板や集成材ではなく、原木から製材したままの材木や建材のことを言います。
近年ハウスメーカーに対抗して工務店やリフォーム店で無垢材を推奨したチラシなどをよく目にするようになりました。
風合いがあり安全などとメリットばかりが強調されていますが、安易に選ぶのではなく割れや変色、管理も難しく無垢材によってはホルムアルデヒドも自然に含有された木もあるので、全て無垢材にすれば絶対安心とは言えないので注意が必要です。
特に化学物質に敏感な人はいくら自然のものとはいえ、匂いの強い無垢材を多用するのには危険を感じるので、十分検討しなければなりません。

6. 集成材

集成材とは断面寸法の小さい木材をノリで接着して作った木材や建材で柱や梁などの構造用の物と造作用の建材に分けられています。
ある時期集成材に使用するノリの成分にホルムアルデヒドが含まれるなどの問題がありましたが、今では建築に用いられる接着剤などには基準値が設けられ、自然の製品と変わらないくらい低く抑えられるようになってきましたがゼロになったわけではありません。
集成材に於いて接着剤は製品のクオリティを決める重要な要素で、耐久性や施工性、安全性などに大きく関わってきます。

集成材のメリットとデメリット

集成材は大きく歪んだり大きく割れたりすることがないので建築の完成度は高くなりますが、使われている木材のストレスが強制的に抑えらているため、小さな割れや内部に割れが入ったりします。
接着剤を使用しているので、集成材を焼却すると黒煙が出てカーボンニュートラル(環境での炭素循環量が±0)にはなりません。

ハイブリッド集成材

米松や日本のスギなど種類の異なる樹木を張り合わしたものをハイブリッド集成材と呼んでいて、特に大スパンの木造建築などに利用されています。
ヤング率(曲げ強度)や密度などが大きく異なる樹種を貼り合わせるので高い技術が求められています。

7. まとめ

建築に於いて柱や梁の構造材や床や内装に使われる建材は、無垢材にしても集成材にしても一長一短あると言うことを分かった上で選ぶことが求められます。
例えば安全で健康的な家を求めて100%無垢材で家を建てたと思っても、住み始めてから体調不良を起こす可能性も捨てきれません。
また、狂いのない集成材だと信じていても特に安価な商品にはそれなりの理由があるので、完成後に思わぬトラブルのリスクは拭いきれません。
「建築に絶対は無い」ので家を建てる時には自分で最終判断し、納得して材料選びをすることをお勧めします。