リフォームの見積書/一式工事の本音




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一式工事からその会社の理念が見える

リフォームの見積書には通常内訳書が対になっています。
内訳書は見積金額を裏付ける根拠なのですが、その内容を見て全て理解できるでしょうか。
例え説明を受けたとしても100%理解するのは不可能に近いと考えられます。
特に1,000万円を超えるような内訳書になると、リフォーム業者によっては営業担当者ですら説明ができない項目もあるくらいです。

一人担当者制のリフォーム業者の場合は、営業担当者が積算もして見積書を作成しているので説明もできるでしょうが、分業制で仕事をしているリフォーム業者の営業担当者には到底説明できるとは思えません。
そういった理由から会社によって内訳書を出来る限り簡略し、営業だけの担当者でも説明できるようにしています。

「リフォームの追加工事トラブル」でも書いていますが、見積内訳書を見るだけでその会社の理念なども見えてきます。
一式工事の多い大雑把な内訳書ほど利益重視の会社に見えます。
内訳書の内容を簡略し、一式工事が多いほど利益を取りやすいのです。
一つの項目も細分化して書けば、その内容に責任が付いてきます。
時には書いた事によってお客様から指摘を受けることにもなります。
一式工事にしておけば言葉だけでどうにでも言い訳出来るのです。

例えば仮設工事と言う項目を一式500,000円とした場合、「その中には仮設足場と仮設トイレ、仮設の電気や設備工事、養生費、清掃費などが含まれています。」と言葉で伝えればアバウトな説明で済みます。
しかし細分化した見積明細にした場合、仮設足場は何㎡で何万円と明記することで、その金額の根拠を示すことになります。
仮設トイレは何ヶ月レンタルしていくら、設置費用は何万円などとなります。
もっと詳しく書くこともありますが、詳しく書くほどグレーなものが白くなっていくのです。

見積内訳の明細を詳しく記入するほど言い訳が出来ない代わりにクレームなどのトラブルも減ります。
よくある「言った」「言わない」のトラブルが減るのです。

ある程度の規模のリフォームになると、見積内訳の項目が10項目以上になります。
例えると仮設工事、解体工事、給排水設備工事、電気設備工事、木工事、サッシ工事、屋内建具工事、塗装工事、内装工事、機器類工事、タイル工事、左官工事、コンクリート工事などです。
これらの工事項目の中には更に細分化された工事が出てきます。
例えば内装工事の中にはクロス工事やクッションフロア工事、畳工事にカーテン工事など多くの項目が含まれます。
それらの工事の一つ一つに詳細が必要です。
クロス工事なら何㎡貼って㎡単価はいくらと言った具合です。

表1 信頼重視の会社の内訳書の例

名称 適用 数量 単位 単価 金額
クロス工事 壁、天井 450 1,200 540,000
クロス下地工事 既存塗り壁部 24 1,100 26,400
クッションフロア トイレ、脱衣室床 5 3,600 18,000

これは内装工事の内訳例ですが、この数量や金額が妥当か判断できる一般のお客様はいないでしょう。
リフォームの仕事をしていても、この数量が大きく間違っていないかすぐに判断できる人は少ないと思います。
長年リフォームの仕事を通して積算業務やプラン設計、現場管理などを経験してやっと身に着くと言っていいでしょう。
例えば6帖間の壁が約30㎡で天井も足せば50㎡と平面図を見ただけですぐイメージできるリフォームのプロはごく限られています。

表2 一式工事が多い内訳書の例

名称 適用 数量 単位 単価 金額
クロス工事 壁、天井 450 1,200 540,000
クロス下地工事 1 52,000
クッションフロア 1 36,000

この表2だけを見ていると違和感もなく、もっともらしく見えますが表1と比べると如何でしょう。
一式工事を増やすことによって利益を水増ししているのです。
もしお客様に「このクロス下地工事は何ですか」と指摘を受けても「壁全面をパテで慣らさないといけないところがあって手間の掛かる工事です」と言えば納得してしまうでしょう。
数量や単価の入っていない工事は、建築関係の人に見せてもその根拠は分かりません。
どう見ても本工事より少ない量の追加工事で、本工事より高い見積金額だったので内訳書を見ると一式工事になっていたと聞いたこともあります。

一式工事を全て否定しているわけではありません。
諸経費などのように一式でしか表現しにくい項目もあります。
会社によって違いはありますが、見積書には工事内訳だけでなく、その見積書の有効期限や別途工事、消費税の有無、支払い条件などが記載されています。

まとめ

・信頼重視の会社ほど見積内訳書が詳細で枚数も多い。
・利益重視の会社ほど見積内訳書に一式工事が多い。
・利益重視会社の見積内訳書ほど専門用語が多く分かりにくい。
・理解の出来ない工事項目は分かるまで説明を受けましょう。
・納得しにくい一式工事は内容と共に数量と単価の根拠の説明を求めましょう。
・会社によってはリスクを回避する目的で一式工事にすることもあります。
・一式工事が多い会社は言い訳も多い。
・一式工事に明確な根拠はありません。
・内訳書は見積金額の根拠です。
・カーテンやエアコン、家具類などは見積に入れない会社もあるので確認しておきましょう。
・見積書には工事金額や工事内訳以外にも条件などが書いてあります。