大工さんは毎年1万人ずつ減っている




早く手を打たないと職人不足は深刻

昨年の総務省国勢調査で2030年には大工の人数が21万人になると予測されていました。

21万人と言われてもピンとこないのが普通ですが、おおよそ年間に1万人ずつ減っていると考える方が分かりやすいのではないでしょうか。

その数字に一番影響を受けるのがリフォーム業だと思われます。
新築とリフォームを大工さんの仕事内容で比較しても断然リフォームの方が難しく、新築を優先する大工さんが多くなるのは簡単に予測できます。

そうなるとリフォーム業は受注できても仕事ができないとか、優秀な大工さんを確保できずにクレームが増え、衰退せざるを得ない状況に陥るのではないか心配になってきます。
既に多くの地域で新築の着工待ち状況が続いていて、発注しても着工は一年後といった地域も存在するくらい大工さんが不足しています。
このような大工さん不足の原因は、大工という職業に人気がなく、成り手がない状況が続いているにも関わらず、建築業界が未だに下請けに頼り自ら打開策を確立していないことにあります。
もちろん工務店と言われる組織体では今でも大工人材の育成を行っている会社も多くありますが、その内容は昔ながらのシステムで決して現在に相応しいシステムとは言えません。

早く手を打たないと間に合わない人材育成

例えば一人や二人の大工さんで仕事を廻しているリフォーム会社は何かの理由でその内の一人でも欠けてしまえばたちまち仕事ができなくなってしまいます。
かといってこの職人不足の時世に簡単に優秀な大工さんを助っ人でお願いする事など不可能に近いと言えます。
今まで大工さんという人材はどんな風に育成されてきたかというと、工務店で見習いとしてとかベテラン大工さんへ弟子入りなどして何年も掛かって一人前になってきた職人さんがほとんどです。
しかし現在ではそんな悠長なことをしている時間も予算的余裕もないのです。
現在でも大工を育成する学校などはありますが、高額な学費が必要であったり、学校も少ないので全国のリフォーム店が潤うほどの人材は確保できていません。

会社単位で人材育成

それぞれの会社で確立されたカリキュラムを使い、計画的に時間を掛けずに大工さんを育成する時代になっています。
問題になるのは大工を育成するカリキュラムと体制、それに短期離職のリスク対策です。
人材育成に時間を掛けても戦力となるまで育った頃に離職されたのでは堪ったものではありません。
昔なら研ぎ仕事から始まって時間を掛けていた育成も、今は道具の進歩でかなり省略することができます。
例えばノミやカンナの刃を研ぐことや現場で材料に墨を打つこともほとんどなくなりましたが、それらは現在の現場に行けばよく分かります。
建材製品による施工で、今リフォームや新築の現場に行っても昔のようにカンナ屑や木屑はほとんど落ちていません。
大工技術で最も難しいとされるカンナ掛けとか真っすぐ切る技術は今では道具が行ってくれます。
水平や直角を出す墨出し技術もレーザーを使った道具に頼ることになるので、昔に比べ大工が習得しなければならない技術は格段に少なくなっているのです。
もちろん現在でも曲尺(かねじゃく)などを使った規矩術(きくじゅつ)のような伝統技術も大切にしなければなりませんが、オリンピック景気などで予測できるリフォーム需要にも対応できないであろう大工不足の問題は深刻と思われます。

今から育成する大工に必要な知識や技術

これからの大工には昔堅気の大工とは違った知識や能力が必要になります。
特にリフォームの現場で必要になる大工の能力は、大工技術の他に工程管理や予算管理、安全管理などの総合的な現場管理知識や現場の職人たちをまとめるコミュニケーション能力などです。
そのような理由で施工管理技士や建築士などの建築に関わる資格取得も重要視しなければなりません。

要はひとたび現場を任されれば、大工仕事は基よりその現場の責任者となり得る能力を求められているのです。
従ってその責任負担からそれ相応の給与を得なければ割に合わないことになります。
現在ではどう頑張っても大工の年収が一千万円を超えるとは思えませんが、例えば能力によっては一千万円を超える年収の大工さんが在籍する会社があってもおかしくないでしょう。

特にリフォームではそのような多能工な人材は欠かせませんが、なぜそれが大工なのかと言えば、他の職人(左官やタイル、内装や板金など)に比べ圧倒的に現場での稼働率が高いからです。

会社単位で行う大工人材育成

学校と違って建築会社なら現場実習も容易なだけでなく指導者にも事欠きません。
ただ、カリキュラムを作ったりそれらを実行する人材や体制を整えるまでに時間が必要になるでしょう。
大工さんがいなくなる前に育成できる体制が作れるリフォーム会社こそが、今後生き残っていくのだろうと感じています。

先ずは大工職人が毎年1万人ずつ減っているという現実に目を背けないことです。

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